なおぼうけん

日々を探検したり、掘り下げていきます。

見つめる先に

残暑はもう終わりました

「何も取り柄がない人が社会でやっていくのに必要なのは勤勉さと従順さだ」

そんな美徳を信じ、仲間が集まると、異端を恐れては美徳を守るために排除した。

これもそうしたかったのだろうか。足を踏もうと振りかぶった様子が傍目に入り、咄嗟にそれをかわすと、強く床を踏みつけた拍子につまづき、転んでしまった。

悔しさなのか、惨めさなのか。泣いているおじさんを眺めていた。だが泣く場所が悪く、女子高生がスカートをおさえながら、怯えていた。それに気がついた駅警備員がおじさんを取り押さえ連れ出すと、電車は間もなく発車となった。

ガラス窓の向こうに、無念ともいえる姿があった。

こちらに顔を向けて泣いているが、僕を見ている様子ではなかった。こんなはず、の起点とも言える、何事もなかった時を想い、そのときに見た夢を見ていたのだろう。それはまるで思ってもみない目覚めをして泣いている赤子のようだった。

電車がホームから離れる。窓にはぽつんと寂しそうに外を見つめる僕が映っていた。