埃・いつも・炭酸
2020/08/17
埃(Dust)
引越し費用の支払いが済むと、それまでの腰の重さが嘘のように整理が進んでいく。要らないものを捨てる、段ボールに荷物を詰める、冷蔵庫の食べ物を減らす。 徐々に無機質になっていく部屋と、淡々とそれに近づける僕、露わになっていく埃。
いい加減大学の課題をやらないとまずいと思いながらも、片付けを先行して行うところは昔から変わっていない。
普段いろんなところに潜んでいたはずの埃も、そのまま表に出ているとどこか嫌な気持ちがするのは不思議だ。まるでそれを直に吸っているみたいだからだ。
いつも(As always)
整理が進んでいくのは部屋だけじゃない。身辺もだ。といってご近所付き合いがあったわけではない。ただ行きつけのお店に行く度に、これが最後なのかもしれない、と思うだけだ。
いつも歩いた道を通れば、いつも居た気がする人がいて、変わらない。変わっているところがあるとすれば猛暑が覆いかぶさっているということだけだ。
お昼休み、お弁当を買いに行くと、おばちゃんが「いつもありがとう」と言ってお弁当を手渡してくれた。
また言われたいなと思うけれども、それもあとわずかの日だけだ。
炭酸(Sparkling)
何かしらの造形をするとなると、そのためにいろんなことを感じ取って行くことが大事で、良いことにも悪いことにも敏感に感じるような力が求められるように思うのだが、それもそれで大変なことだ。
ぬるぬると生きていきたいという話をする友達の顔を見ながら、僕はビールを煽っていた。
泡が弾ける感覚がどれかなんて考えもしない。そんなことはどうでも良い。うまければ良いし、わかり易ければ嬉しい。
あれやこれやという間に飲み会は終わって、家についた。熱くなった部屋、キッチンの方で何か饐えた香りがして、鬱陶しいと思いながらソファーに座った。 気がつくと居眠りをしていて、首に違和感が残っていた。
明日はこの痛みと戦うことになるのかと思うと嫌気がさして、そのままベッドで眠ってしまった。