なおぼうけん

日々を探検したり、掘り下げていきます。

デラックスのり弁・傘・ほうじ茶

2020/07/22

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デラックスのり弁(Deluxe lunch box with dried seaweed)

朝目が覚めて、雲の色に染まった部屋の色を眺めながら、曜日感覚を確かめていた。今日は水曜日。出勤がないと大した感情の浮き沈みがないから不思議だ。カーテンを開けても、天気が良かった日が嘘のように、街がねずみ色に染まっている。

惰性で焼いたトーストを齧りながら、ぼんやりと1日の予定を確認していた。夜髪を切る。楽しそうな予定だけは心が外さずに捉えているのを感じて、何となく健康であることを自覚する。

いくつか仕事をし、気がつくと午前11時30分。お昼の時間。湿度の高まりで時間の経過を感じるけれど、外は相変わらず灰色だ。

グレーゾーンな街に足を踏み出し、お昼ご飯を手に入れに僕は行く。大将の唐揚げ定食か、中華料理屋の五目炒飯か。

常連さんが立ち並ぶ店は入りにくいという感覚は意識することもなく実践してしまうのだが、その壁を超えた店が最近できて、今日もそこへ行くことにした。 おばちゃんたちが注文と同時に素早く調理をしてくれるお弁当屋さん。価格は安くて、量は多い。そういうお弁当屋さんは大学の頃によく行っていたけれど、家の近くにもあったということを4年住んでようやく知ったのだった。

この前はスペシャルボリューム弁当だったから、今日は何にしようと思っていると、おばちゃんが「今日は何にする?」と声をかけてくれた。

厨房に注文を告げるおばちゃんの背中を眺めながら、人柄の良さに触れた時の温かさを感じていた。

傘(Umbrella)

午後は雨がふる、野球を見に行く人は注意をした方がいい。そのようなニュースを目にして、いやだなと思った。髪を切りに行く時間に豪雨の予報と言われ、快い気持ちになるわけはない。

しょうがなく傘をカバンにいれ、午後の仕事に取り掛かった。

ボリュームのあるお弁当でありながら、食べ過ぎたと思わない味付けや量をしているところが気に入っているのだろうと思う。 ただ量だけが多いと、眠気が押し寄せてくるからだ。取り掛かって1時間経ってもなお、眠くはならない。

外の色が変わらないためか、1時間がずっと続いているような気持ちがした。今まさに悟空なら戦闘力が勢いよく増していることだろう。

時間が来て、仕事をやめて美容室に向かった。一度行ったお店だけど、順調に道に迷う。石の色、空の色、全て灰色だ。どことなく色味が違うと感じさせられることが、時間の経過を感じさせた。この道路はあの空よりもずっと古いのだろう。

美容室に着くと、いつものように美容師さんの娘さんが椅子に座っていた。かなり大人びていて、幼さを残している。いつ見ても不思議な子だ。

窓を正面にして髪を切られながら、徐々に青く染まっていく街を眺めていた。今日は雨が降るらしんですよ、という話をして、それはいやだねと美容師さんは言った。天気が悪い日なのに、長い夕方は外が青く染まり、まるで天気の良い日の朝のような雰囲気がある。
まだ雨は降っていない。

やがて服を着替えた娘さんが、鼻歌まじりに靴を履き、外に出て行った。
その手には傘が握られていた。

ほうじ茶(Roasted green tea)

髪を切って外に出ると、夜の涼しさが少しだけ感じられた。それも束の間、すぐに熱気にかわり、夏の優しさはどこかへ消えて行った。

久しぶりにスタジオでバンド練習をする予定があったので中野に向かう。街は色めきだっていて、そこで明日から連休なのだと気がついた。

スタジオに着くと、店長が髪を短く切り揃えていることに気がついた。そのことを聞くと、夏は暑くて見た目に拘っていられない、と言っていた。 似合っているためか、どこか言い訳がましく響いた。

そんな店長が好きだ。

スタジオに入り、演奏する。ギターに合わせ僕がドラムを叩く。普段の1人の練習と全く感覚が変わることにも少しは慣れてきて、心地よさを覚える程になった。 それが終わると、いつものように居酒屋で酒を飲んだ。言われてみて、お好み焼き屋さんの次に、沖縄料理屋さんに行きたがる癖があるなと思った。

泡盛を注文して、ゆっくりそれを飲んだ。

帰り際、バッグからスタジオで口にするために買ったほうじ茶を取り出し、アルコールを薄めるような気持ちで口に入れた。

それが美味しくなかったことを口をつけてから思い出した。しょうがない、そういう日もあるものだ。

良くはないが大事には至らなかった友達の病状を聞いて、僕はその友達と初めて一緒に飲んだビールの味を思い出していた。