睡魔・イランイラン・デビュー
2020/07/23
睡魔(Unconsciousness)
海の日の朝、泡盛の香りで目が覚めた。 ここが沖縄で小波の音が聞こえて、もう一度ゆっくり寝られるような日ならどんなにいいか。なかなか布団から出られるまま、どうして今日は仕事なんだと目を伏せた。
起き上がって茫然としながら、空間を見ていた。部屋を見ているけれど、どこも見ていなかった。 体調不良ではないことはわかっていたけれど、無気力だった。
またベッドに体を倒して目を閉じた。何も考えられなくなって、浮いているような感覚に襲われた。
これまで過ごしてきた様々な授業や社会人になってからの研修、遅くまで仕事をした後の電車の中。同じ感覚をいくつも経験してきた。
睡魔はやってくるというより、遠くにいて、吸い取ってくるような存在だ。
イランイラン(Cananga odorata)
何とかベッドから起き上がると、良い匂いがした。外で髪を切って髪を洗ってもらった翌日はそれが楽しみだ。
なぜかいろんなシャンプーを試していた時期があった。髪に合うかよりも香りが好みかということだけで様々なものを試していた。 その時、フレッシュフラワーとかそういう表現でなく、ただイランイランの香りと書いてあったものがあり、語感が印象的で好きだった。 香りもエスニックな雰囲気が感じられ、クセになるところがあった。
昨日のシャンプーはその香りがする。20歳の頃に覚えた香り。
仙台のLoftの2階でそれ選んでいた時の風景がふと浮かんでくる。
覚えているつもりのないシーンが、思わぬ鍵で開くことがあって、それが泡盛の香りの後にやってくることだってあるのだ。
そうして仕事を始めた。疲れに気づかないふりをしていたんだなと思うのは夜になってからのことだったが、その時は気持ちを切り替えて仕事をし始めたのだ。
デビュー(Debut)
小さい頃から聞いていたアーティストがデビュー25周年のアルバムを出したと宣伝していた。 そういう話は珍しくないが、それだけ続くことはあまりないわけで、その軌跡の裏側に一体どんな努力があったのだろうと考えさせられる。
そう思うこともそう珍しくない。最近は「デビュー」ってなんだろうということを考えることの方が多い。
一介のサラリーマンとして生きている場合はきっと入社1年目がデビューなのかもしれない。難しく考えるから疑っているだけで、それで良いのかもしれない。 ただアーティストがいうデビューはすでにプロとしての成果を出してからの年数であるように見てしまうのだ。
何か僕は僕自身をくったような感覚を持っているのかもしれない。
ふと頭がぼんやりとして、惰性でSNSを開き、一時的な感情の集まりが並んでいるのに気付き、そっと閉じた。
明日は何を食べよう、何を書いて、何を見よう。 何から食べたいと思っただろう。
そのお皿はいつ下げられてしまうのだろう。