切替・戦術・蒸し器
2020/08/04
切替(Switching)
「こんな状況だからできたこともあるよね」
という人もいる。僕たちは直近の出来事を2点を取ってきて、その変化を分析するのに、知っている他の大きな出来事を、単に当てはめがちなのかもしれないと思う。
この夏まで、家にいる時間が少ないままだったら色々とやっていたことは今どういう運びになっていただろう。そう思い巡らせながら、久しぶりの出社のために電車に揺られていた。
在宅勤務に切り替える人が増えて、職場に来ても人がほとんどいない状況になった。オリンピックがあるから、そんな夏が来るかもと想像しては「まさかね」と思っていたけれど、見事に実現したわけである。
そう思うと、変化を渋る判断のほとんどは、現状維持を望む感情的な判断なのではないかと考えてしまう。
自分の席についてPCを取り出し、熱くなった身体を団扇の風で覚ました。買ってきたお茶を一口飲んでから作業に取り掛かるのは、僕のスイッチの1つになっている。
戦術(Tactics)
フルカウントになれば、それが2アウトなら、ランナーはスタートを切る。デメリットがない戦術はセオリーと呼ばれる。もちろん牽制には気をつけなければいけない。
そのフルカウント一つ手前でランエンドヒットを狙ったりするから、プロ野球は面白い。当然守備は乱され、鬼気迫るプロのプレーが現れることになる。
テレビ中継や速報では守備シフトがあまりよくわからないのが難点だが、そこもわかるとより戦術を楽しみながら野球が観れるのだ。 野球中継は投手の力投、塁到達までのプレー、打者の力強さ、ベンチの様子あたりに焦点が当たりがちで、もちろんそれが面白いところの上位を占めているだけれどーー
バスケットボールのような視点でありながら、野球のような視点の中継がみたい。
しかしどうしてこうも野球のめり込んでいるのか、自分でもよくわからない。
好きになってから始まることはほとんどないのかもしれない。
蒸し器(Steamer)
野球速報を見ていると、最寄りの駅についた。降りていく人の背中についていく。
今日は火曜日、明日は水曜日。
外に出ると夏の蒸した夜が待っていた。居酒屋の明かりに虫が集っている。 気にせず歩いているつもりが、鞄と背中の間がじっとりした感覚に襲われると、流石に無視できない。
豪気を帯びた首都高の高架下。鞄の片側のストラップを外して、少し身体を斜めにしながら、僕は歩いた。
下は大火事、上は大洪水。
スケートボードの音が通り過ぎていった。街の光が少しだけ、流れているように見えた。