速報・スタンプ・口数
2020/07/31
速報(Sports flash)
寝ぼけ眼を擦りながらアラームを消そうとスマホに手を伸ばす。気がつくとアラームはオフになっていて、また少しだけ休んでいるのだ。 そうしてしばらく経ったあと目が覚めて、領域を埋め尽くすほどの通知をぼんやりと確認する。
日本は朝だけど、北米は夜。今か今かとその日のスポーツの速報が、寝ているうちに溜まっているのだ。
いくつかをチェックしてから体を起こす。 記憶には残らない。何となく、眺めるだけ。
身支度が整って、仕事をし始めるあたりには試合が始まっている。 片時も目が離せない。好きなチームの速報は逐次チェックしてしまう。
誰に頼まれるわけでもなく。
その一瞬が好きだから。
スタンプ(Stamp)
お昼になり、いつものお弁当屋さんに向かった。おばちゃんが今日は何にするのと聞くので、デラックスのり弁大盛を注文した。 デラノリ。
カウンターの向こうで通じている言葉はいつも機能的だ。
午後は少し抽象的なことばかり考えていたので、気分転換が必要だった。短距離走にはインターバルが必要だ。 そこでゆうパックを送りに郵便局に行くことにした。
母は本が好きだから、僕が読んだ本を時々送っている。
局内で実家の住所を書き、貼り付けて窓口にできていた列に並んだ。
いつもの郵便局には綺麗なお姉さんがいて、市民とも打ち解けているのが印象的なのだが、今日はどこか殺気立っていた。 何かあったのだろう。いや、考えすぎだろうか。そう思っているうちにお姉さんの後ろから現れたお兄さんが僕の荷物を対応してくれた。
その時だった。お姉さんがスタンプを力強く押していて、傍目には手際がいいように見えるのだけれど、窓口では見たことのない真顔が一瞬だけ顔を覗かせていた。
やはり何かあったのかもしれない。
口数(Talking less)
脚の治療も進んできて、初めて整骨院に行ったときはその痛みに耐えきれなかったのだが、今はもう凌げる。 呼吸を乱さなければ、なんとかなる。
整骨院は施術中に雑談をするものだと大学の時に勝手に刷り込まれていたので、今もそうしてしまっていた。 人それぞれ合う合わないがあって、そういうわけでもないと気づかずに。
そういうところも慣れてきた。わずかの会話で交歓をし、体の好不調を確認してもらう。 やがて痛みがきて、それに耐える。
減らす方向にリズムを作るのは難しいけれど、もういい年だからそういうことも覚える必要があった。
整骨院を出ると日が暮れていて、まだ終わることのない梅雨が七月を完全に覆い尽くそうとしていた。