運動会・ベルト・新聞紙
今日何があった?
運動会(Sports day)
一等賞を取ると金色のシールを貼ってもらえる。銅色のシールを貼って家族がシート広げている場所に行くと、母は褒めてくれた。父は褒めているような、そんな雰囲気だ。今日は特別な日。お昼のお弁当には好きなものがたくさん入っている。慌てて食べていると母が声を掛ける。午後も動くんだから、あんまり食べ過ぎないのよ――
エレベーターが開き、まだ梅雨の開けない空が目の前に広がった。 前を歩く違う会社の男性たちが、自分の子どもたちが例年どういう運動会をするのか話すのを聞きながら、僕は小さい頃の自分を思い出していた。 今自分が東京にいる姿など、まるで考えもしなかった、あの頃のことを。
結婚はまだか、とわざわざ言われなくても、僕が毎日問いかけている。
軽妙洒脱な服装で前を歩く背中が少し輝いて見えるけれど、ただ芝が青く見えるだけなのかどうかは、よくわからないままだった。
ベルト(Belt)
そのまますっと目線をおろすと、ベルトの上に贅肉がのっていた。はっと現実に返ると、そこで男性たちが互いに自慢し合う会話をしていることに気がついた。 俺の子の学校ではスタジアムを借りて運動会をする、車を買った、あの駅は立地の割に格安のマンションがある、良い保険があった。
まるでお山の大将でもやっているようだ。
順調な暮らしもなかなか大変だ。
新聞紙(Stacking)
柄にもないことをやって、それがいつしか実績と呼ばれてしまうことは時に残酷である。
とりあえずやってみようもきちんと評価できる人がいてこそだ。
毎日の積み重ねが大事とはよく言うし、わかっていてもやることは難しい。そしてそれが良いかどうかもかなりの確率でよくわからない。
手付かずのままにダメだったとラベリングされてしまうことがざらにある。
なければないで困ることがあるというのが少し不思議である。