なおぼうけん

日々を探検したり、掘り下げていきます。

10番・客引き・タクシー

今日何があった?

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10番(Counter No.10)

「お兄さん免許更新?新規?書類がいるよ」と声をかけてくる人がいて、しつこい。さっさと通り過ぎるとそこに免許センターはあった。 平日だというのにたくさんの人が詰めかけていた。

受付の列に並びながら、数年前に撮った自分の顔写真を眺めた。 どうしたら良いかがわかっていないのにも関わらず、受けた指示に不平不満をこぼすおじさんを何人か眺めているうちに、更新処理は恙無く完了した。

新しい免許を手に、そそくさと浅草へと向かう。免許の写真は、しかしまあどうしてこう面白写真になってしまうのか不思議である。

浅草に着くと、人力車が余っていた。浅草寺の参道を歩いていると、その道の広さに気づかされた。 お土産やお菓子を売るお店の店員さんの声と少しの足音がそこに響いていて、ほんの少しだけシナモンの香りがした。

誰もいないおみくじ売り場でおみくじの箱を振り、番号を確認する。79番と書いてあるのを見た時、あの10番窓口で職員に怒っていた人の背景にあっただろういろいろなことを想った。

ふと我に返り、そこに出会いがいまいちだと書かれているのに気がついた。すると柔らかい雨が降り始めて、浴衣姿の女性が足早に軒下に入っていくのが見えた。

客引き(Barker)

秋葉原は不思議な街だ。世界が疫病下にあって、新たな日常を見出そうとしている。ここも例外なくその渦中にあるはずなのに、相変わらずの熱気が満ちている。

好きなものに囲まれ、それに後押しされる様に歩く人々の背中は、口よりも雄弁に語っていた。

そんな活気あふれる街を歩いていると、見知らぬ女性が話しかけてきた。ここでは手を振るメイドさん以外話しかけてくる人などいるなんて思わないものだから、不意をつかれ、少し驚いた。

「私は絵を売っています、絵に興味がありますか」

そう言って紙を手渡してきた。120万円の絵が売っていると書いてある。黙って立ち去ろうとすると、留学生ですかと聞かれた。

夜になってビールを飲んでいると、あの台詞は受け流したつもりでいてどこか引っかかっていたのかもしれないと、料簡を起こした。

タクシー(Taxi)

病院でいろいろな検査を受けてきて、そして明日も検査をするのだと友達が言った。 淡々と話す様に、強かさが感じられる。

これから何があるのだろう、何ができるのだろうという不安がそれを覆っていた。

何をするにも今までの通りにはならないのかもしれない。

だがそれが重要なことかという点で、彼には気づきがあるのかもしれなかった。ゴールまでの道のりが少し変わっただけ。 今を受け入れて、前に進もうとする姿勢。

ビールを煽り、喜悦を見せ明日はタクシーを呼んで病院に行くのだと語る。

店には僕と友達しかおらず、そんな僕たちをどう思ったのか、店長がお裾分けの煮物をくれた。

心配するな、なんとかなるさという台詞がいつもよりも無責任に感じてしまって、いつもならそういうはずが、その時は日本酒とともに飲み込んだ。