なおぼうけん

日々を探検したり、掘り下げていきます。

卒業

心と秋の空

何かを始める。そのハードルは年々高くなっている気がする。心のどこかで毎日の積み重ねがやがて実を結ぶと信じていて、そしてその日進月歩の道のりが楽ではないことを察知している。ただ生活するだけでも楽ではない。人生は長いようで短い。今から走り出してもゴールできないのではないかという心の台詞が既に、何かとの比較のための天秤の重りなのだ。

「そう言っていた時もあったよね」

そう言って酒を交わすこともしばしばあるような気がする。思いの寺を訪れ、お参りをする。ハードルはそこの鳥居のような存在だ。あるいは、言葉で表現することを躊躇う。言えば泣き言に情けは人の為ならず、言わねば味のある男。そんな気色だ。

表を歩けばそれは輝かしい未来へと繋がっている。 今はまだ眠る獅子の僕。

実際のところ、何かを始めるハードルは思っているほどには高くない。 どんな形であれ始めること自体は容易いからだ。

始めた、と思えれば何をしても良い。そこに他者の理解や納得が介在する必要はなく、ただ当事者としての自分がよしとすればそれで良いのだ。したがって、はじめての大変さとは瞬発力を発揮することができるかどうかという点にかかっている。最初の勇気は称賛されるべきで、偉大だ。

ある意味爽やかな挑戦と言えるだろう。そういうものはいくらでもやるべきだ。

僕はそれよりも、一度踏み入れた場所が引き返しの効かない長いトンネルだったらと思うと恐ろしくなる。そこでは逃げることも、隠れることも、捨て去ることもできない。

「僕はいったい何時になったら卒業できるのでしょうか」

トンネルの向こうは見えますか。夜だから、見えないのでしょうか。

外へと飛び出すことができた時、こわがらないでいてくれますか。