なおぼうけん

日々を探検したり、掘り下げていきます。

買い物かごの夜

生活

イタリアンサラダ、豆腐、竹輪。いつものものがカゴの中に詰まれていった。 なぜパプリカが少し入っているだけでイタリアンサラダと呼ぶのかは、あまり疑問に思わないようにしている。

降りなさい、やめなさい、あぶないでしょと注意する声はもう遠くに行ってしまい、お肉すきすきの曲と、生産者の声の動画音声が混ざりあいながら生鮮食品コーナーを満たしていた。

カレーのルーがあるコーナーに来た。カレーのルーの前で立ち止まる人は多い。カレーは作りやすい。カレーのルーに好みも出やすい。 でも変えてみようかなという気持ちも湧きやすい。意外と値段にばらつきがある。このルーの中辛は他の中辛と同じかどうかを気にしたりする人もいる。

そして同じように悩む先客がいて、みたいわけでもないパスタソースをじっくり眺めることだってある。青の洞窟、ほんとに美味しいのだろうか。 パスタの値段の違いがわかるひとなら、この高い麺を買うのだろうか。

やっと空いたというところで、のっそりと歩き出し、いつものルーを手に取りカゴに入れる。 悩んでいる人がいるのをみたあとだと、あんまり悩むことなく決められている気がするのは不思議だ。

スーパーでの導線はだいたい同じだ。野菜を見たら魚を見る。肉を見て、お豆腐とかをみる。あとは調味料とか、ふらっとカップ麺を覗いたりもする。 そういうのは、通路に誰かが立ってたりして、それで違う道をただ選んだだけだったりするのだけれど。 意味もなく味噌、ポン酢、冷凍食品、少し戻って高級そうなフルーツ。それらが散歩中にカゴに入ったことはない。

味噌だけはあったかも。

フルーツのあったところから、2週目の店内は軽やかだった。颯爽と人をかわし、そしてレジまで。

となるはずだったのに、誰かがお弁当にシールを貼る様子が間近に見えた。 あたりはカゴを空にした人が徘徊しながら、シールが貼られていくのを見守っている。

レジに並ぶカゴの中にはサラダ巻が入っていた。40%オフ。

今日はもうカレーを作らずに済ませちゃうんだよね。

レジの中で積み重なりながら、豆腐を最後に入れている背中が見えた。 また来週来るのかな。

煌々と光る店内とは対照的な夜の闇の中に、信号の灯が灯っていて、青になると背中は遠ざかっていった。