なおぼうけん

日々を探検したり、掘り下げていきます。

浜風・拍手・捩る

2020/08/10

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浜風(Sea breeze)

出航する船を眺めながら、浜風で汗を乾かしていた。自転車で横浜の街中を駆け巡るも、いよいよ暑さに耐えかねて日陰で休んでいたのだ。 さっきまで引越し先の契約をして、その前は寝坊して急いで電車に乗って。

これから住む街を眺めているのに、これまで住んでいた街を思い出していた。

連絡がきた。もうすぐ友達が横浜に着くらしい。

今日はこれから野球を見に行く。この街を代表する球団の、熱い戦いを応援するために。

自転車のペダルを踏むと、電動アシストが僕を追い抜いていって、風で帽子が飛びそうになるのを少しだけ押さえた。

拍手(Hands clap)

球場に入ると、今か今かと試合を待ちわびた観客が暇を持て余すように何かを食べたり、飲んだりしていた。 感染症対策で話すことも抑えるように指示された場内では、久しぶりに野球を生で見る興奮と、ファンと対面した感動とが入り交じりながらも、ここでルールを守らないとまたこの機会が得られなくなるという葛藤があって、皆が感情の処理をうまくできずにいるようだった。

それほどまでに野球は皆に愛されている。それだけは確かに、そこにあった。

試合が始まった。本来は様々な声が入り混じり、そして応援歌が鳴り響くスタジアムには、グラブにボールが入る音、打球の音が響いていた。 それに追従するように、観客の拍手の音が会場を埋め尽くしていて、静かな熱気があたりを包み込んでいた。

手に汗を握る暇もなかった。

捩る(Twist)

試合が終わって友達を見送った後、1人京浜東北線の車内で考え事をしていた。

かつて山下公園の近くを散歩してAudiの店があったのに、なぜかそれをフォルクスワーゲンだと思ったこと。 弓道の大会で、夢中になって的を狙った時のこと。初めて入った会社の同期と、朝までカラオケをしたときのこと。

毎日会わなくなっても疎遠にはならずにいてくれて、それでも大きな出来事があって初めて近況を知ること。

川崎、蒲田と駅を過ぎるたびにたくさんの人が乗降して、車内の様子はその度に一変した。 仲良く友達と話す人の姿が目に入ると、なぜか僕も嬉しくなった。

浜松町駅で降りて駅の階段を登った。顔を上げた先に東京タワーが輝いていて、そのオレンジ色の光が、なぜか目に焼き付いた。