太麺・ストロベリーアイス・VR
2020/08/07
太麺(Thick noodles)
どうしてあんなにたくさん食ってやろうと気勢を上げていたのに、わずかばかり残った麺が口に運べないのだろう。
それが太麺だと最後まで歯応え満点で、顎すらやめてくれと悲鳴を上げている。各所を宥めるように水を飲んで落ち着かせようとするのだが、やり方が悪かったようでお腹が反発していた。
なす術なしの状況で、「気合」なんて言葉が、こんなにも甲斐甲斐しくその場を諫めるなんて。汗を拭い、残してたまるものかとラーメンを掻きこむ。感染症対策で開いた扉から熱風が入りこむと、しかしなぜか涼しく感じたのだった。
こうやって眺めている面も、夜になればきっと食べたくなっているのに、どうしてだろう。
こんなに苦しいのは。
友達の家に戻り、冷蔵庫にある烏龍茶を取り出し、そのまま飲んだ。すぐに冷蔵庫に戻した。
ストロベリーアイス(Strawberry ice)
明日は大学の授業があるから、その予習をしなくてはと意気込んでいた。のだが、友達の家でソファーに座ってアイスを頬張っていると、どうしてかそれがどうでもよく感じられてしまうのだった。 もちろんやけになっているのではない。
ただ何が大事かを身体が理解しているという感覚があった。
無闇矢鱈に走って、アイスが食べられない時間を過ごすことが僕のやりたいことではない。
そう宣言した脳内会議議長に同意した者は思っていたよりも少なく、そろそろ帰るか、と思ったのはちょうどその頃だった。
最後にゲームをやらせてくれ、と頼んだらまずは風呂に入って汗をなんとかしてくれと頼まれ、僕は素直にしたがった。
VR(Game using virtual reality)
ヘッドマウントディスプレイを装着すると、そこには首都高の夜が広がっていた。徐々に走り出すのかと思えば、物凄い加速で前進するメルセデスを僕は操った。 後ろから近づいてくるアウディが横を通り過ぎようとするけれど、そのヘッドライトの光は間も無く小さく遠ざかっていったのだった。
何と比べて言っているのか自分にもよくわからずに、今のゲームはすごい、と自然に発していた。
世闇を猛スピードで駆ける一台の車両。リアルな映像ではあるけれど、その様はリアルとは程遠い。
頭からそれを外すと、じっとり汗をかいていた。映像に酔った僕は、友達に烏龍茶を取って来て欲しいと頼んだ。