なおぼうけん

日々を探検したり、掘り下げていきます。

重要事項・庭・行きつけ

2020/08/06

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重要事項(Important matter)

「これだけは譲れない条件ってありますか?」

不動産の仲介、必ず聞かれることだ。大概お金で解決できるのが不動産仲介のセオリーだ。そうそうその手段をとれることなんてないわけで、何かを妥協する。

この質問にうまく答えられたことがない。洗面台は欲しいですよね、とアシストされ、はい、と答えるだけだ。僕は毎回洗面台が譲れない人ということになっている。

似た物件の紹介、来店したから知り得たお得物件の紹介、目をつけていた物件の見学、交渉、あ、お茶のおかわりは結構ですーー

決める時は不意に訪れる。後に回すということは実はない。またその時に決めるだけだ。

偶然来たセンタリングに合わせてヘディングでシュートする。ゴールを決められるかは自分次第だ。

路線図を眺めていると、その上に何度も見た書類がおかれ、重要事項の説明が始まった。 その説明を聞いている間、心にぽっかりと穴が開いたような気がして、その風通しの理由を探していた。

庭(Garden)

いつかは庭付き一戸建て。そんな思いを令和の今も抱いている。いつかがいつまで経っても来ないけれど、いつかは来る。

そこへ向かっているから。

長い道のりかどうかもよくわからずに、津々浦々。度々現れる案内板を見ては、どこかの道を選んで歩き出す。

道を迷っていると感じる時もあれば、気にならないこともある。

そこが自分らしく在れるところだと思えば、そこが庭付き一戸建てとなるのだろう。

「なら買えばいいじゃん」と言う軽薄さも、今となっては正しいようにも思える。

行きつけ(Favorite place)

長く住んだ街には居心地の良い空間がいくつもあって、後ろ髪が引かれる思いがする。 住んでみればいつしか忘れて、また新しい居場所を見つけて。

あの時のあの人は今どうしているだろうと、少しだけ想って。

万感胸に迫る。これほどまでにポジティブな思いで居住を変えたことはこれまでにない。やっとこの街から出られる、と思うことの方が多かった。

少しだけ変わった街並み。名前も職業も知らないけれど、なぜか見たことがある人。今日は何にする?ときいてくれるお弁当屋さんのおばちゃん。夕方の公園。付いてくる猫。会うたびに人事部長時代の苦労を語ってくれるオーナー。今では新人に罵声を浴びせるほど店に慣れた、居酒屋の大将。友達と朝まで飲んだカラオケ屋さん。

良い街だった。